こんにちは。Y&Fのちいこです。

昨日11月6日、新宿のK's cinemaというミニシアターで、金子サトシ監督作品『食卓の肖像』を見てきました。
今、K's cinemaでは、”ドキュメンタリー特集”として、さまざまなドキュメンタリー映画を上映しており、『食卓の肖像』もその1つとして今月6日と14日の2回上映ということになっています。

Y&Fのカネミ油症情報サイトでも、金子監督の『食卓の肖像』についてはたびたび上映情報等を掲載していたので、近くで上映されることがあればぜひ行きたいと思っていました。
平日の真昼間からということで、さすがに劇場満員、というわけにはいきませんでしたが、お客さんには女性も男性もいらっしゃいました。

以下、私の拙い文章で申し訳ありませんが、感想を書かせていただきます。

映画は、カネミ油症被害者のさまざまな方へのインタビューや、彼らの今の生活を追った映像を中心に展開します。なかなか当事者の話を聞くことができない中、映画を通してではありますが、実際に放たれる言葉を聞くことのできる貴重な機会となりました。その中には、認定患者の方も、いまだ未認定の方もいらっしゃいますし、また、そのご家族や、油症の症状をもつ二世の方もいらっしゃいます。

多くの皆さんが共通しておっしゃっていたのは「長らく、皮膚症状が出るのが油症だと思っていた。内蔵の疾患や、疲れの出やすさは、体質だと思っていたし、病院でもそう言われていた」ということでした。実際、被害者の中でも今でもそう思っていらっしゃる方がいるのかもしれません。インタビューに答えていた女性の一人は、「自分と同じような症状を持っていた職場の同僚数名は自分たちをカネミ油症だと思っていないと思う、そのうち一人には最近油症検診を受けてもらって今調べてもらっている」というようなことをおっしゃていました。同じような人がいったいまだどのくらいいるのでしょうか。

インタビュー中、皆さん始終おだやかな表情で、時には笑顔も浮かべて話をされていたのが印象的でした。油症の症状のことだけでなく、油症になってからの人生のお話には聞いていてとてもつらいものもありました。しかし、それぞれが家族や周囲の人々と共に懸命に生きてきた人生を振り返り、お話してくださる姿には、病に負けない強い心が表れていたように思います。
油症患者の救済に尽力されてきた矢野トヨコさんご夫妻をはじめ、皆さん実にさまざまな人生を歩んでこられました。「カネミ油症」という共通項をもちながらも、それに屈するのでなく、それぞれの使命や夢を持ち、生きてこられたのですね。
この映画は、油症の悲劇的側面だけをセンセーショナルに描写するものではなく、油症によって身体的な苦しみ、精神的な苦しみに悩みながらも、強く生きてきた人々の人生を静かに描いている映画だと、私は感じました。

また、油症治療研究班だけに任せず、市民団体主催の自主検診や、被害者や市民が自ら学び、研究をしていくことの意義にもあらためて気づかされました。日本にはまだ市民科学者を育て、支援していく仕組みがあまり整っていませんが、こういう市民の力は、被害者に寄り添い、権力のしがらみにとらわれずに問題解決に向けて前進するのに必要なものだと思います。

映画上映後、金子サトシ監督が(実は私の斜め後ろ辺りに座っていらっしゃったようです)前に出て、ご挨拶をなさいました。監督がこの映画を作り始めた経緯や、いまだ問題の多い認定・未認定基準のこと、そして二世への影響のことなどを、マイクを手にお話しくださいました。
この映画は2010年のもので、劇中「認定患者は2000人に満たない」というコメントがあったのですが、2012年にカネミ油症救済法ができて認定基準が見直され、現在はあらたに200人以上が認定されたので2000人は超えているということ、しかし、それでもそれだけしか認定患者が増えなかったことにはまだまだ問題があることなども補足としてお話ししてくださいました。
次の映画の上映スケジュールもあったために、お話はそれほど長くはなかったのですが、監督の誠実なお人柄がうかがえ、皆さんその真摯な態度を信頼してインタビューを受けていらっしゃったのだなと感じました。

また、終了後には、私の近くに座っていた女性が「五島出身なんです・・・」と監督に話かけているのが耳に入りました。私も簡単ではありましたが、ロビーでご挨拶させていただきました。私たちのサイト作りについても応援してくださり、とても嬉しかったです。

『食卓の肖像』は、11月14日(木)午後2時10分から、新宿K's cinema(ケイズシネマ)にてもう一度上映されます。
カネミ油症問題を知ることができるだけでなく、1本のドキュメンタリー作品としても素晴らしい映画でした。
ぜひご覧になってください。


ちいこ